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ユーザー理解を深める!ITエンジニアのためのアンケート・インタビューツール活用法

Tags: UXリサーチ, ユーザー理解, アンケート, インタビュー, ツール

はじめに

ユーザー中心の開発が重要視される中で、ITエンジニアの皆様もユーザー理解の必要性を感じているのではないでしょうか。しかし、具体的な「ユーザーの声を聞く」方法や、どのようなツールを使えば良いのか、迷うこともあるかと存じます。

プログラミングスキルやシステム設計の知識は豊富でも、デザイン思考やUXデザインの実践経験が少ないエンジニアにとって、ユーザーリサーチは新たなチャレンジかもしれません。本記事では、UX初学者であるITエンジニアの皆様が、ユーザー理解を深めるための基本的な手法であるアンケートとインタビューに焦点を当て、その実践方法と役立つツールについて解説します。

なぜITエンジニアにとってユーザー理解が重要なのか

システム開発における手戻りの多さ、ユーザーの期待に応えられない製品のリリース、あるいは開発後の利用率の低さといった課題は、ユーザーニーズの深い理解が不足していることに起因することが少なくありません。

ユーザーの抱える課題や真のニーズを開発の早期段階で把握することで、より的確な機能開発や改善が可能となり、結果として開発効率の向上、高品質なプロダクトの実現、そしてユーザー満足度の向上につながります。ITエンジニアがユーザーリサーチの手法を身につけ、主体的にユーザー理解に取り組むことは、プロダクト開発において非常に強力な武器となります。

ユーザー理解の基本的な手法:アンケートとインタビュー

ユーザーリサーチには様々な手法がありますが、ITエンジニアが比較的取り組みやすく、かつ多くの情報を得られるのが「アンケート調査」と「インタビュー調査」です。

アンケート調査とは

特定のユーザー層に対し、構造化された質問を配布し、多数の回答から傾向や実態を把握する定量的な調査手法です。

インタビュー調査とは

調査対象者と対面またはオンラインで直接対話し、質問を通じてそのユーザーの経験、意見、感情、行動の背景などを深く掘り下げて理解する定性的な調査手法です。

ITエンジニアがアンケート調査を実践するためのステップとツール

アンケート調査は、特定のユーザー行動や意識に関する仮説を検証したり、ユーザー層の一般的な傾向を把握したりするのに適しています。ITエンジニアがアンケートを設計・実施する際のステップと、役立つツールを紹介します。

実践ステップ

  1. 目的設定: 何を知りたいのか、アンケートで何を明らかにしたいのかを明確にします。具体的な仮説(例: 「利用者は登録プロセスでXXXに困っているのではないか」)があると良いでしょう。
  2. 質問設計: 目的を達成するための質問項目を作成します。回答形式(単一選択、複数選択、自由記述など)を適切に選びます。バイアスがかからないよう、中立的で分かりやすい言葉を選ぶことが重要です。専門用語は避け、具体的な行動に関する質問を増やす工夫も必要です。
  3. 実施: オンラインツールなどを利用してアンケートを配布し、回答を収集します。
  4. 分析: 収集したデータを集計し、傾向を分析します。クロス集計などを用いて、異なる属性のユーザー間の違いなども見ていくと、より深い洞察が得られます。

おすすめツール

ITエンジニアにとって、これらのツールは専門的な知識がなくても直感的に操作でき、効率的にアンケートを設計・実施・分析できる点で役立ちます。

これらのツール以外にも多数のアンケート作成ツールがありますが、まずは使いやすさ、コスト、そしてデータのエクスポート・分析のしやすさで選ぶのがおすすめです。

ITエンジニアがインタビュー調査を実践するためのステップとツール

インタビュー調査は、少数のユーザーから深い情報を得るのに適しています。特に、ユーザーがなぜそのような行動をとるのか、どのような背景や感情があるのかを知りたい場合に有効です。ITエンジニアがインタビューを計画・実施する際のステップと、役立つツールを紹介します。

実践ステップ

  1. 目的設定: インタビューを通じて何を明らかにしたいのか、どのようなユーザーのインサイトを得たいのかを具体的に設定します。アンケートでは得られない「理由」や「背景」に焦点を当てることが多いです。
  2. 対象者選定: 調査目的に合ったユーザー層を特定し、協力を依頼します。プロダクトのヘビーユーザー、ライトユーザー、あるいは競合製品のユーザーなど、目的に応じて慎重に選びます。
  3. 質問設計(インタビューガイド作成): 話の流れを作るための「インタビューガイド」を作成します。一方的な質問リストではなく、会話を弾ませ、ユーザーが自然に話しやすいような問いかけを準備します。「はい/いいえ」で終わる質問ではなく、「〜について、具体的にどのような経験がありますか?」「その時、どう感じましたか?」といったオープンエンドな質問を心がけます。
  4. 実施: 設定した時間にインタビューを行います。ユーザーがリラックスして話せる雰囲気作りが重要です。傾聴の姿勢を持ち、ユーザーの話を途中で遮らず、興味を持って聞くことが大切です。記録の許可を得て、録音やメモを行います。
  5. 記録と分析: 録音を聞き直したり、メモを整理したりして、重要な発言や気づきを抽出します。抽出した情報から、共通するパターンや意外なインサイトを見つけ出し、ユーザー像や課題の定義に役立てます。NotionやEvernoteなどのツールで情報を整理すると分析しやすくなります。

おすすめツール

インタビューの実施そのものや、得られた情報の整理・分析に役立つツールは多岐にわたります。ここでは、エンジニアが普段使い慣れているツールや、導入しやすいツールを中心に紹介します。

アンケート・インタビューを成功させるためのポイント

UX初学者のITエンジニアがアンケートやインタビューを成功させるためには、ツールを使うことだけでなく、いくつかの基本的なポイントを押さえることが重要です。

まとめ

本記事では、UX初学者のITエンジニアの皆様に向けて、ユーザー理解を深めるためのアンケートとインタビューという2つの基本的な手法と、その実践に役立つツールを紹介しました。

アンケートは多くのユーザーから定量的な情報を効率的に集めるのに、インタビューは少数のユーザーから定性的な情報を深く掘り下げるのに適しています。Google FormsやSurveyMonkeyでアンケートを手軽に始め、Zoomなどのオンライン会議ツールでインタビューを実施し、NotionやEvernoteで情報を整理するといった形で、普段使い慣れたツールや導入しやすいツールから始めてみることをおすすめします。

ユーザー理解は、表面的なニーズだけでなく、隠された課題や期待を発見し、より良いプロダクト開発につながる重要なステップです。ぜひ本記事を参考に、一歩踏み出してユーザーの声を聞いてみてください。実践を通じて得られる学びは、必ず皆様の開発者としてのスキルセットを広げ、プロダクト開発に新たな視点をもたらすはずです。