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UX初学者エンジニア向け!ユーザーフロー・タスクフロー作成の基本と実践ツール

Tags: ユーザーフロー, タスクフロー, UXデザイン, ツール, エンジニア

はじめに:システムの「流れ」をユーザー視点で捉える重要性

ITエンジニアの皆様は、システムの論理構造やデータフローを設計することに慣れているかもしれません。しかし、ユーザーがシステムをどのように利用し、どのようなステップを経て目的を達成するのか、という「ユーザー視点での流れ」を明確に把握することは、ユーザー体験(UX)を向上させる上で非常に重要です。

ユーザーフローやタスクフローは、このユーザー視点での流れを可視化するための効果的な手法です。これらを活用することで、システムの使いやすさに関わる潜在的な問題を早期に発見し、開発チーム内でユーザー体験に対する共通認識を持つことができます。

この記事では、UXデザインやデザイン思考の実践に関心を持つエンジニアの皆様に向けて、ユーザーフロー・タスクフローの基本的な概念、なぜエンジニアにとって重要なのか、そして作成に役立つ具体的なツールについて解説します。

ユーザーフローとタスクフロー:それぞれの役割

ユーザーフローとタスクフローは似ていますが、焦点を当てる範囲が異なります。

ユーザーフロー (User Flow)

ユーザーフローは、ユーザーが特定の目標を達成するためにアプリケーションやウェブサイト内でたどる可能性のある一連の経路全体を表現します。開始地点から複数の分岐を経て、最終的な目標達成に至るまでの多様なシナリオを含むことがあります。

タスクフロー (Task Flow)

タスクフローは、特定の単一タスクを完了するための理想的な、または一般的な一連のステップに焦点を当てます。ユーザーフローの一部を詳細化したものと考えることもできます。タスクフローは通常、分岐が少なく、直線的な流れで表現されることが多いです。

なぜITエンジニアがユーザーフロー・タスクフローを作成するべきか

デザインやUXの専門家ではないエンジニアにとって、これらのフロー作成はどのようなメリットがあるのでしょうか。

  1. システム要件の明確化: ユーザーの行動を具体的に可視化することで、必要な画面遷移、データ処理、エラーハンドリングなど、システムの詳細な要件をより正確に把握できます。これは仕様の抜け漏れを防ぐのに役立ちます。
  2. ユーザー視点での課題発見: 開発段階の早い段階でユーザーの操作手順を検討することで、「この操作はステップが多すぎる」「ここでユーザーは何を知りたいだろうか」といったユーザビリティ上の問題点や改善の機会に気づきやすくなります。
  3. 開発チーム間の共通理解促進: デザイナー、プロダクトマネージャー、他のエンジニアなど、関係者間でユーザーの行動やシステムの振る舞いに関する共通認識を持つための強力なコミュニケーションツールとなります。口頭やテキストだけでは伝わりにくいニュアンスも、フロー図によって明確になります。
  4. UI設計・ワイヤーフレーム作成の基盤: ユーザーフロー・タスクフローは、ワイヤーフレームやプロトタイプの作成に着手する前の重要な準備段階です。どのような画面が必要で、それぞれの画面でどのような情報が表示され、どのような操作が可能であるべきかの方針を立てるのに役立ちます。
  5. 手戻りの削減: ユーザーにとって使いにくいフローで開発を進めてしまうと、後工程での大幅な修正が必要になる可能性があります。早期にフローを検証することで、手戻りのリスクを低減できます。

エンジニアがユーザーフローやタスクフローを作成することは、単にデザインのタスクを肩代わりするのではなく、開発するシステムの「使いやすさ」という非機能要件を、より具体的かつ論理的に検討するための有効な手段と言えます。

ユーザーフロー・タスクフロー作成に役立つ実践ツール

専門的なデザインツールに馴染みがなくても、直感的に操作でき、ユーザーフローやタスクフローの作成に適したツールは数多く存在します。ここでは、UX初学者エンジニアにおすすめのツールをいくつかご紹介します。

1. オンラインホワイトボードツール (Miro, FigJamなど)

オンラインホワイトボードツールは、自由なキャンバス上で付箋や図形を配置し、線で繋ぐことで、チームでの共同作業に適したフロー図を簡単に作成できます。

2. シンプルな作図ツール (draw.io / diagrams.net, Cacooなど)

これらのツールは、フローチャートや様々な図形描画に特化しており、オンラインホワイトボードツールよりも構造化された図を作成するのに向いています。

3. UI/UXデザインツールの一部機能 (Figma/FigJam, Sketch + Pluginsなど)

FigmaのFigJamや、Sketchなどのデザインツールにフロー作成用のプラグインを追加することで、UIデザインと連携しながらフローを作成することも可能です。

作成時のヒント:ツールを使う前に考えること

ツールを使ってすぐに図を描き始めるのではなく、以下の点を事前に整理しておくと、より効果的なフローを作成できます。

これらの要素を紙やテキストで簡単に書き出してからツールを使うと、思考が整理され、スムーズに作業を進めることができます。

まとめ

ユーザーフローやタスクフローの作成は、システム開発においてユーザー視点を取り入れ、使いやすいプロダクトを実現するための重要なステップです。これらのフローを可視化することで、エンジニアはシステムの機能要件だけでなく、ユーザー体験という側面からも設計を検討する力を養うことができます。

今回ご紹介したツールは、いずれも比較的簡単に始めることができ、ユーザーフロー・タスクフロー作成の強力な助けとなります。ぜひこれらのツールを活用し、ユーザー中心のアプローチを日々の開発業務に取り入れてみてください。ユーザーの「流れ」を理解することは、より良いシステムを構築するための確実な一歩となるでしょう。